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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
調査が終ると、検事は、法水が透視的な想像をした理由を訊ねた。
「君はどうして、易介がここで殺されているのが判ったのだね」
「無論鐘鳴器の音でだよ」と法水は無雑作に答えた。「つまり、ミルの云う剰余推理さ。アダムスが海王星を発見したというのも、残余の現象は或る未知物の前件である――という、この原理以外にはないことなんだ。だって、易介みたいな化物が姿を消しても、発見されない。そこへ持ってきて、倍音以外にもう一つ、鐘鳴器の音に異常なものがあったからだよ。扉で遮断された現場の室とは異なって、廊下では、空間が建物の中に通じているのだからね」
「と云うのは……」
「その時残響が少なかったからだよ。だいたい鐘には、洋琴みたいに振動を止める装置がないので、これほど残響のいちじるしいものはない。それに、鐘鳴器は一つ一つに音色も音階も違うのだから、距離の近い点や同じ建物の中で聴いていると、後から後からと引き続いて起る音に干渉し合って、終いには、不愉快な噪音としか感ぜられなくなってしまうのだ。それを、シャールシュタインは色彩円の廻転に喩えて、初め赤と緑を同時にうけて、その中央に黄を感じたような感覚が起るが、終いには、一面に灰色のものしか見えなくなってしまう――と。