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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

三、屍光故なくしては

その間、何やら認めていた検事は、法水を指招いて、卓上の紙片を示した。それには次のような箇条書で、検事の質問が記されてあった。

一、法水は大階段の上で、常態ではとうてい聞えぬ音響を召使が聴いたのを知ったと云う――その結論は?

二、法水は拱廊で何を見たのであるか?

三、法水が卓子灯を点けて、床を計ったのは?

四、法水はテレーズ人形の室の鍵に、何故逆説的な解釈をしようと、苦しんでいるのであるか?

五、法水は何故に家族の訊問を急がないのか?

読み終ると、法水は莞爾として、一・二・五の下に――を引いて解答と書き、もし万に一つの幸い吾にあらば、犯人を指摘する人物を発見するやも知れず(第二あるいは第三の事件)――と続いて認めた。検事が吃驚して顔を上げると、法水はさらに第六の質問と標題を打って、次の一行を書き加えた。――甲冑武者はいかなる目的の下に、階段の裾を離れねばならなかったのだろう?

「それは、君がもう」と検事は眼を瞠って反問したが、その時扉が静かに開いて、最初呼ばれた図書掛りの久我鎮子が入って来た。

三、屍光故なくしては

久我鎮子の年齢は、五十を過ぎて二つ三つと思われたが、かつて見たことのない典雅な風貌を具えた婦人だった。