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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
続いて、法水の調査が造園倉庫にも及んだのは当然であるが、そのシャレイ風の小屋は床のない積木造りで、内部から扉一つで本館に通じていた。そして、各種の園芸用具や害虫駆除の噴霧器などが、雑然と置かれてあった。法水は、本館に出入りする扉の側で、一足の長靴を見付けだした。それは先が喇叭形に開いていて、腿の半分ぐらいまでも埋まってしまう、純護謨製の園芸靴だった。しかも、底に附着している泥の中で、砂金のように輝いているのが、乾板の微粒だったのである。のみならず、後刻になって、その園芸用の長靴は、川那部易介の所有品である事が判明した。
そうなってみると読者諸君は、この二様の靴跡に様々な疑問を覚えられるであろうが、ことに、ある一つの驚くべき矛盾に気づかれたことと思う。また、靴跡相互の時間的関係から推しても、夜半陰々たる刻限に、二人の人物によって何事が行われたのか――恐らくその片影すら、窺うことは不可能であるに相違ない。云うまでもなく法水でさえも、原型を回復することは勿論のこと、この紛乱錯綜した謎の華には、疑義を挾む一言半句さえ述べる余地はなかったのである。しかし法水は、心中何事か閃いたものがあったとみえて、鑑識課員に靴跡の造型を命じた後に、次項どおりの調査を私服に依頼した。