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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

そういう暗澹たる空模様の中で、黒死館の巨大な二層楼は――わけても中央にある礼拝堂の尖塔や左右の塔櫓が、一刷毛刷いた薄墨色の中に塗抹されていて、全体が樹脂っぽい単色画を作っていた。

法水は正門際で車を停めて、そこから前庭の中を歩きはじめた。壁廓の背後には、薔薇を絡ませた低い赤格子の塀があって、その後が幾何学的な構図で配置された、ル・ノートル式の花苑になっていた。花苑を縦横に貫いている散歩路の所々には、列柱式の小亭や水神やサイキあるいは滑稽な動物の像が置かれてあって、赤煉瓦を斜かいに並べた中央の大路を、碧色の釉瓦で縁取りしている所は、いわゆる矢筈敷と云うのであろう。そして、本館は水松の刈込垣で繞らされ、壁廓の四周には、様々の動物の形や頭文字を籬状に刈り込んだ、や糸杉の象徴樹が並んでいた。なお、刈込垣の前方には、パルナス群像の噴泉があって、法水が近づくと、突如奇妙な音響を発して水煙を上げはじめた。

「支倉君、これは驚駭噴泉と云うのだよ。あの音も、また弾丸のように水を浴びせるのも、みんな水圧を利用しているのだ」と法水は飛沫を避けながら、何気なしに云ったけれども、検事はこのバロック風の弄技物から、なんとなく薄気味悪い予感を覚えずにはいられなかった。