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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

あの人は、死体となってからも、喝采をうける時機を失ってしまったのですからね。それが、昨夜の八時以前だったのです。その頃には既に津多子夫人は、遠く精霊界に連れ去られていたのです。ですから、あの人こそ、ダンネベルグ夫人以前の……、つまり、この事件では最初の犠牲者だったのですよ」

「なに、殺されて※(感嘆符疑問符、1-8-78)」真斎は恐らく電撃に等しい衝撃をうけたらしい。そして、思わず反射的に問い返した。「す、すると、その死体はどこにあると云うのです?」

「ああ、それを聴いたら、貴方はさぞ殉教的な気持になられるでしょうが」と法水は、いったん芝居がかった嘆息をして、「実を云うと、貴方はその手で、死体の入っている重い鋼鉄扉を閉めたのでしたからね」とキッパリ云い放った。

とたんに三つの顔から、感覚がことごとく失せ去ったのも無理ではない。法水は、あたかもこの事件が彼自身の幻想的な遊戯ででもあるかのように、吐き続ける一説ごとに、奇矯な上昇を重ねてゆく。そして、ちょうどこの超頂点が、はっきりと三人の感覚的限界を示していたからであった。そこで法水は、この北方式悲劇に次幕の緞帳を上げた。