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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

「ちょうど晩食後一時間頃のことで、図書室に戻さねばならないカイゼルスベルヒの『聖ウルスラ記』を、書棚の中から取り出そうとした際でございました。突然蹌踉いて、持っていたその本を、隅にある乾隆硝子の大花瓶に打ち当てて、倒してしまったのでございます。ところが、それからが妙なんですわ。そりゃひどい物音がしましたけれども、別にお叱りをうけるというほどの問題でもございません。それなのに、ダンネベルグ様がすぐとお出でになって……でございますもの。私には未だもって、すべてが判然と嚥み込めないような気がいたしております」

「いや、夫人はたぶん貴女を叱ったのではないでしょうよ。怒り笑い嘆く――けれども、その対象が相手の人間ではなく、自分がうけた感覚に内問している。そういうように、意識が異様に分裂したような状態――それは時偶、ある種の変質者には現われるものですからね」と法水は、伸子の肯定を期待するように、凝然と彼女の顔を見守るのだった。

「ところが、事実はけっして……」と伸子は真剣な態度で、キッパリ否定してから、「まるであの時のダンネベルグ様は、偏見と狂乱の怪物でしかございませんでした。