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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
つまり、踵の足型の中へ全部入れずに、幾分持ち上げ気味にして、爪先で靴の踵の部分を強く押しながら歩くのだよ、そうすると、踵の下になった靴の皮が自然二つ折れて、ちょうど支い物を当てがったような恰好になる。したがって、靴の踵に加えた力が直接爪先の上には落ちずに、幾分そこから下った辺りに加わるだろうからね。いかにも、足の矮小なものが、大きな靴を履いたような形が現われるのだ。のみならず、それが弛んだ弾条のように不規則な弾縮をするから、そのつどに、加わってくる力が異なるという訳だろう。したがって、どの靴跡にも、一々わずかながらも差異が現われてくるのだ。すると、右足に左靴、左足に右靴を履くことになるから、歩線の往路が復路となり、復路が往路となって、すべてが逆転してしまうのだよ。その証拠と云うのは、乾板のある場所で廻転した際と、枯芝を跨ぎ越した時と――その二つの場合に、利足がどっちの足か吟味してみるんだ。そうしてみたら、この差数が明確に算出されてくるじゃないか。で、そうなると支倉君、どうしてもクリヴォフ夫人が、この詭計を使わねばならなかった――という意味が明瞭するだろう。