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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

それから、レヴェズを見つけて連れて来ることなんだ」

ようやく悪夢から解放されたような気持になって、旧の礼拝堂に戻ると、そこには再び、装飾灯の燦光が散っていた。その下で、聴衆はここかしこに地図的な集団を作って固まっていたが、壇上の三人は、それぞれに旧いた位置から動かされなかったので、それでなくても不安と憂愁のために、追いつめられた獣のように顫え戦いていた。クリヴォフ夫人の死体は、階段の前方にほとんど丁字形をなして横たわっていた。それが俯向きに倒れ、両腕を前方に投げ出していて、背の左側には、槍尖らしい桿状の柄が、ニョキリと不気味に突っ立っていた。死体の顔には、ほとんど恐怖の跡はなかった。しかも、奇妙に脂ぎっていて、死戦時の浮腫のせいでもあろうか、いつも見るように棘々しい圭角的な相貌が、死顔ではよほど緩和されているように思われた。ほとんど、表情を失っている。けれども、その――一見、安らかな死の影とも思われるものは、同時にまた、不意の驚愕が起した、虚心状態とも推察されるのだった。そして、死体の背窪を一杯に覆うて凝結した血が、指差している手の形で、大きな溜りを作っていて、なお薄気味悪いことには、その指頭が壇上の右方に向けられていた。