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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《それでも私は行く(それでもわたしはいく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 頁
「…………」
「どうして、泊ったりなんかしたの……?」
「…………」
「その男の方好きなの……?」
「ううん……」
千枝子は、ふと小郷虎吉の脂切った顔を想い出した。
「弓ちゃん、きいてくれる……?」
そして、千枝子は昨夜のことを語り出した。
四条通りを円山の方へ折れて行った。
南座には「文楽」が掛っていた。「文楽の女って、皆哀しい女ばかりだけど、姉さんも哀しい女になってしまったのね」
東山では「悲願戦災者救援同盟」の慈善鍋が出ていた。
「悲願!」
と、弓子は呟くと、豹のように眼を光らせた。
再び木屋町通りまで引き返して、そこで千枝子に別れると、弓子はその足で西田町の叔父の家に帰り、荷物を纒めた。
そして木屋町三条を上った小野屋旅館に投宿すると、すぐ京極の雑閙へまぎれ込んで行き、男の懐中をねらった。
宿賃を稼ぐためもあるが、第一の目的は、姉を苦界から救う金を作るためであった。……
と、こんな風に詳しくは、さすがに弓子は鶴雄の前では云えなかったが、とにかく話のあらましだけは語った。
「つまり生意気なようだけど、悲願なの」
「なるほど、ただの掏摸じゃなかったわけだね。