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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《それでも私は行く(それでもわたしはいく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 頁
六
だから、桑山竹夫の言葉をきくと、ふと食指が動いた。それに小郷の家を見て置きたいという好奇心もあったから、山吹教授に紹介状を書いて貰ったのだった。
「ジュリアンになれたら本望だ」
つねにサイコロによって自分の行動を左右しながら、運命の刃の上を渡るような激しいスリルを求めてやまない鶴雄は、倦怠した生活から脱け出す血路を、下鴨の小郷の家に求めてやって来たのである。
ところが、和製のジュリアン・ソレルもいきなり出戻り娘に浴室へ浸入されるようでは、随分相場も下落したものである。高貴な精神もへったくれもあったものじゃない。ただ、官能的なはしたない場面が鶴雄を待ち受けていたに過ぎない。
鶴雄は出るに出られず、湯槽の隅に小さくなっていると、
「あたしがはいっちゃ恥かしいの……?」
と、宮子は言いながらあられもなく同じ湯槽へはいって来ると、
「あんた、うぶなのね」
燃えるような眼で鶴雄の横顔を見つめた。
六
「実際へんな工合でした……」
と、その入浴のことを、鶴雄はあとになってから小田策之助に語った。
「――何しろはじめての経験でしょう?」
「はじめてとは、何がはじめてなの」