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しゅんきんしょう

ちくま日本文学014 谷崎潤一郎

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《ちくま日本文学014 谷崎潤一郎(しゅんきんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,196 字 · 169 頁

青空文庫

そして彼女にも是非大阪へ出て来るようにと言づてを聞いたけれども、そんな所へ見すぼらしい姿で上れるはずもなし、妹の方もあれなり故郷を訪れたことがなかったので、彼女はついぞ成人してからの妹と云うものを知らずにいるうち、やがてその旦那様が死に、妹が死に、彼女の方の両親も死に、もうそれからはなおさら津村家との交通が絶えてしまった。

おりと婆さんはその肉親の妹、―――津村の母のことを呼ぶのに「あなた様のお袋さま」と云う廻りくどい言葉を用いた。それは津村への礼儀からでもあったろうが、事によると妹の名を忘れているのかも知れなかった。「おえいは日々雪のふる山に葛をほりに行き候」とあるその「おえい」と云う人を尋ねると、それが総領娘で、二番目がおりと、末娘が津村の母のおすみであった。が、ある事情から長女のおえいが他家へ縁づき、おりとが養子を迎えて昆布の跡を継いだ。そして今ではそのおえいもおりとの夫も亡くなって、この家は息子の由松の代になり、さっき庭先で津村に応待した婦人がその由松の嫁であった。そう云う訳で、おりとの母が存生の頃はすみ女に関する書類や手紙なども少しは保存してあったはずだが、もはや三代を経た今日となっては、ほとんどこれと云う品も残っていない。