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しゅんきんしょう

ちくま日本文学014 谷崎潤一郎

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《ちくま日本文学014 谷崎潤一郎(しゅんきんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,196 字 · 169 頁

青空文庫

庭の稲荷の祠については守り神として代々祭って来たのであるから、若夫婦たちもその手紙にあるものに相違ないことを確かめてくれた。もっとも現在では家族の内に狐を使う者はいない。由松が子供の頃、お祖父さんがよくそんなことをしたと云う噂を聞いたが、「白狐の命婦之進」とやらはいつの代にか姿を現わさないようになり、祠のうしろにある椎の木の蔭にむかし狐が棲んでいた穴が残っているばかりで、そこへ案内をされた津村は、穴の入口に今は淋しく注連縄が渡してあるのを見た。

―――以上の話は、津村の祖母が亡くなった年のことであるから、宮滝の岩の上で彼が私に語った時からはまた二三年前に溯る事実である。そして彼がこの間中から私への通信に「国栖の親戚」と書いて来たのは、このおりと婆さんの家を指すのであった。と云うのは、何と云ってもおりと婆さんは津村に取って母方の伯母であり、彼女の家は母の実家に違いないのだから、そののち彼は改めてこの家と親類の附き合いを始めた。そればかりでなく、生計の援助もしてやって、伯母のために離れを建て増したり、紙すきの工場を拡げたりした。そのお蔭で昆布の家は、ささやかな手工業ではあるけれども、目立って手広く仕事をするようになったのである。