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チェーホフのたんぺんについて
カシタンカ・ねむい 他七篇
神西 清
線上閱讀神西 清《カシタンカ・ねむい 他七篇(チェーホフのたんぺんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 頁
チェーホフの亜流が誘われがちの湿っぽい感傷から、彼女が全く免かれているのは、強ち緯度の違いや、ましてや時代の違いからばかりではあるまい。何故ならそこに見られるものは単なる醇化作用ではなく、いわば強い昇華作用が働いているからだ。これが影響の最も望ましい形であることは言うまでもない。マンスフィールドには何か私録のようなもの(たしか日記だったと思うが)があって、それが発表されているように聞いているが、これはそのうち是非読んでみたいと思う。
だが差当りチェーホフのことに帰ろう。彼の思想的動向の要約という問題から一応離れて、問題を彼の短篇様式の発展ということに限るにしても、一体この隔離そのものが困難なのと同じ程度に、その発展の道にはっきりした道標を置くことは難かしい。仮りにあり来たりの仕方で、彼の作品を初期と後期に分け、そのあいだに隔ての網を張る。しかし魚はこの網をくぐって自由に交通するのだ。
ひと先ずこれを承知の上で、彼の初期の作品、略一八八六、七年ごろまでの作品を眺めることは勿論可能であるが、そこには大して取り立てて言うほどのこともない。よく知られている如く彼は純然たる衣食のために、完全に商業主義的に文を売ることから出発した。