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チェーホフのたんぺんについて
カシタンカ・ねむい 他七篇
神西 清
線上閱讀神西 清《カシタンカ・ねむい 他七篇(チェーホフのたんぺんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 頁
するほかはない。
チェーホフには「芸術家の自由に関する宣言」とでも名づけていい文章があって(一八八八年十月、プレシチェーフ宛の手紙)、よく方々に引用されて有名である。それによると、彼は自由主義者でも保守主義者でもない。漸進論者でも坊主でもなく、無関心派でもない。自由な芸術家であるほかに望みはない。偽善や蒙昧や専横がのさばっているのは、何も商家や監獄にかぎらない。科学にも文学にも青年の間にも無いとは言えない。だから自分は憲兵も肉屋も学者も文士も青年も、べつだん贔屓にしてはやらない。制服やレッテルは偏見だと思う。自分にとって聖の聖なるものは、肉体、健康、智力、才能、感興、愛、絶対的な自由、一切の暴力や虚偽からの解放……ということになって、誰だかが悪口を言ったとおり、まさしく無い無いづくしの観がある。だが要点は、この素朴ないし可憐な宣言、あるいは願望のうちに、どの程度までチェーホフの本音を認めるか――ということにある。その度合によってチェーホフの像が千変万化することは言うまでもない。僕はこの宣言をそっくりそのまま頂戴する立場に立つ。その結果引き出されるものがペシミストの像であるか、それともオプチミストの像であるかなどということも、差当り心配しないことにする。