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チェーホフのたんぺんについて

カシタンカ・ねむい 他七篇

神西 清

線上閱讀神西 清《カシタンカ・ねむい 他七篇(チェーホフのたんぺんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 頁

青空文庫

成心を嫌ったチェーホフを考える場合、やはりなるべく成心を避けた方が自然でもあり、礼儀にもかなうように思われるからである。

のみならず僕は、チェーホフがその教養において、ダーウィン流の進化論的倫理説の信奉者であったこと、一種のスペンセリアンですらあったことを、率直に認めてかかりたいと思う。大学を出る前の年(一八八三年春)、チェーホフは「性権消長史」ともいうべき労作を思いたって、兄アレクサンドルに共同研究を提言している。これが、当時西欧から北欧へかけて異常な昂揚を示していた婦人問題熱に対するチェーホフの敏感な反応を示すものであることは明らかだが、彼が兄に送った長い手紙によると、それは大よそ次のような構想をもつものだった。――目的は博物学と人類史との間の空白を埋めることにある。一般的方法としては、帰納法より寧ろ演繹法による。各論の部のプログラムとしては、まず動物学であり、これは自分の大好きなダーウィンの方法による。つづいて、人類学――一般史・科学史・女子大学史――解剖学――比較病理――倫理問題――犯罪統計――売淫――ザッヒェル・マゾッホ――教育問題――最後にスペンサーの名論……という仕組みで、要するに進化論に出でて進化論的綜合哲学に終るかなり大がかりな体系をなすはずのものであった。