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チェーホフのたんぺんについて

カシタンカ・ねむい 他七篇

神西 清

線上閱讀神西 清《カシタンカ・ねむい 他七篇(チェーホフのたんぺんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 頁

青空文庫

管見によればチェーホフの笑いは、彼の非情に少くも劣らぬだけの重要性をもつ。それは非情と相俟って、彼の存在を支える車の両輪だったとさえ言っていい。実際もし彼に笑いがなかったら、通常われわれ人間という弱き者にとって最後に残される支えであるところの「憎悪」からも完全に切断されている彼の非情な芸術は、一体どんな形をとることになったか想像も及ばないのである。それは先ほど引合いに出したジョイスにしろポウイスにしろ、畢竟ある種の緊張ないしは或る残酷な感じから、必ずしも免かれ得ていないのを見れば、容易にうなずける事がらでなければならない。チェーホフの笑いが彼の生活と芸術において演じた大きな役割については、恐らく別にそれを主題にした一文を必要とするだろう。以下はいわばこの未熟な序説に一応のしめくくりを附ける意味で、問題のありかを二、三指摘するにすぎない。

通説によればチェーホフの文学生活は、一八八七年『イヴァーノフ』の執筆を境目にして、前後の両時期に分たれる。前者はアントーシャ・チェーホンテという筆名をもって蔽われる一時代で、つまり初期のユーモア作家としての活動期を示す。