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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
を思わせて全く古今調である。それらの歌によって、実朝は晩年に近くなるにつれ、一層京都化して新古今調になったのではないかという推定説すら可能となるわけである。勿論私はあの『新古今』の歌にそっくりのものになったろうとは決して思わない。けれども、『万葉』の語ばかりを使ってはいまいと思うのである。そしてその点はむしろ欠点でなくて、美点であると思う。私は実朝がむやみやたらに天性の感力を持っていた点が何よりも褒めらるべき点だと思う。芸術家としての天分といえば「詩」があるということである。実朝には「詩」があった。
川田氏の『全註金槐集』を見ると、いかに『新古今』の歌の句を取っているかということが解るし、斎藤博士の諸論によると、いかに後鳥羽院の御製や三代集にまなんでいるかということが分る。しかも実朝は、ひと目でそれと判るように露骨に人の句をとっている。けれどもそれはすべての歌が二十二歳までに出来たものであることを考えれば、すべて素描の稽古時代の歌なのだから無理はない。定家や家隆などが漸く百首歌の稽古をはじめる年頃には、『金槐集』の歌はすでに終をつげているのだから、それを考えれば他人の成句を如何に多く二句三句ぶち抜きにとっていても、その点はきびしくいうことはできぬ。