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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

谷風にとくる氷のひまごとにうち出る浪や春の初花     古今  一

わが宿の梅の花さけり春雨はいたくな降りそ散らまくもをし

春雨はいたくなふりそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも  万葉 一〇

秋風に夜のふけゆけばひさかたの天の河原に月かたぶきぬ

ぬばたまの夜はふけぬらし雁がねのきこゆる空に月かたぶきぬ

ぬばたまの夜はふけぬらしたまくしげ二上山に月傾きぬ   万葉 一七

秋風に夜のふけゆけば天の川河瀬に浪のたちゐこそ待て   拾遺  三

さ夜中と夜はふけぬらし雁がねのきこゆる空に月渡る見ゆ  万葉  九

こうした歌をよく読み比べてゆくと、実朝の歌の方が風流の歌だということが分ってゆくであろう。勿論自然に対して深く感じうる心を持っているに違いないが、自然を深く感じることは即ち風雅である。その心を歌おうとして、古歌に類例を見つけ出しながら作っていると、いつの間にか古歌よりもそつのない、おさまった歌が出来ている。恐らく彼は、自分自身の自然感覚よりは、もっともっと強く、それに似通ったものをうたっている古歌の表現を愛している。彼が真に愛したのは言葉である。何故といって、言葉には文化があるからである。