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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
十五
その後の歌は、あれは一体何であろうか。私はそこに近世の新しい生活の発生するまで、そしてそのあたらしい生活が和歌を承けつぐまで、真に「詩」である和歌は影を歿していたのでないかと思うのである。ただそこに、弱りはてながらつづく細々とした形式の授受があったのである。
十五
吉野時代にはしかし、今一つ忘れてならぬ大きな一面がある。それについては諸君がすでに十分感付いておられるであろうように、吉野方の和歌である。吉野朝関係の和歌の文献も様々のこっているけれども、これまでの記述の大様に釣合わせるならば、何といっても宗良親王御撰の『新葉和歌集』を中心にして考えなければならない。
元来吉野の朝廷は、吉野にばかり在ったのでなく、皇居はしばしば移っていること、また京方の諸院が、吉野朝の皇居に軒を並べて御座あったこともあるのは、諸君も国史を学ばれて充分知っておられるところであるけれども、何といっても大体は吉野が中心であった。あの南和の山岳地帯に、吉野時代を通じて朝廷を置かれた御不便は想像に余りあるが、よく長い期間を維持出来たのは、大和・伊勢・紀伊・河内・和泉がその勢力範囲であって、大和アルプスを脊椎とした大山岳地帯全体が海洋に三方を取りまかれて、大城廓をなし、どうにも攻め様がなかったのと、今一つは熊野の海は海賊の根拠でもあって、