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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《人外魔境(じんがいまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 頁

青空文庫

「ドドとは……」

「僕らがつけた、この紳士の名前です」

「はっはっはっは、じゃ、有尾人ドド氏というわけだね」

とアッコルティ先生が笑っているなかにも、なにやら解せぬような色が瞳のなかにうごいている。野生のもの、しかも智能のたかい猿人的獣類が、わずか十日か二週間でこうも懐くはずがあるだろうか。

「ときに、君はこのドド氏をどこで獲ったのだね」

「場所ですか」とカークは思わせぶったようにすぐには答えず、まず、ドドを捕まえるにいたった一仍始終を語りはじめた。

「とにかく、ドドが懐いたというのは、最初の出がよかったからですよ。僕は先生のお説の、ゴリラ定期鬱狂説を利用して、今度こそ六尺もある成獣を捕えてやろうと思って出かけたのです」

アッコルティ先生は、前年度の学会にゴリラ定期鬱狂説を発表して、斯界に大センセーションをまき起した。

ゴリラには、憂鬱病と恐怖症が周期的にきて、その時期がいちばん狂暴になりやすいという。そして苦悶が募って来て堪えられなくなると“Hyraceum”を甜めにきて緩和するというのだ。ヒラセウムとは、岩狸が尿所へする尿の水分が、蒸発した残りのねばねばした粘液で、カークはこのヒラセウムのある樹洞のまえに、陥穽を仕掛けようとしたのであった。