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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

お妙 この頃は狼の噂で、どこでも早く寝てしまうようです。

おいよ (耳を傾ける。)砧の音も止んで、唯きこえるのは虫の声ばかり……。ほかには何んにも聞えるものも無い。(又もや耳を傾ける。)おまえには何か聞えますか。

お妙 (耳をかたむけて。)いいえ、虫の声のほかには……。

おいよ なんにも聞えませんか。

お妙 はい。

(二人はしばらく無言。梟の声きこゆ。)

お妙 あれ、梟が……。

おいよ え。(又もや耳をかたむけて。)ほんに梟が鳴く……。さびしい晩です。(気をかえて。)さあ、おやすみなさい。おまえには早く起きて貰わなければなりません。あしたの朝も、兄さんの帰る前に火を焚きつけて、お湯を沸かすようにして置いて下さい。

お妙 はい、はい。では、お先へ臥せります。

おいよ おやすみなさい。

(お妙は会釈して、やはり気味悪るそうにおいよを見返りながら奥に入る。時の鐘。おいよは木戸口へゆきて、しっかりと錠をかける。)

おいよ 今夜は思いのほかに早く更けた。

(おいよは何かの声が聞えるかと耳を澄ましながら、引返して筵の上に坐る。梟の声。)

おいよ (おびえたように見返る。)いや、いや、あれはやっぱり梟の声……。