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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

なまじいの文など書こうよりはと思案して、その古歌を書き申した。それも上のただ一句、その方がなかなかに奥ゆかしゅう見ゆるであろうと存じて……。それにつけてもお身もあっぱれの才女じゃ。武蔵守殿は武勇一遍の人じゃと思うていたに、息女に対する日ごろの仕付け方も思いやらるる。起き臥しわぶる恋ぞくるしき――さすがにようぞ説き当てられた。」

当代の歌人、日本一の文者と呼ばれる兼好に、正面からこう褒められて、小坂部はさすがに晴れがましいような顔をうつむけた。その昔、なにがしの君が大堰川のほとりで蹴鞠の遊びを催されたときに、見物のうちに眼にとまるような嫋女があった。蔵人に言い付けてその帰るあとを付けさせると、女もそれに気がついたらしく、蔵人を見かえって「なよ竹の」とただひとこと言い残して立ち去ってしまった。それは「高しとて何にかはせんなよ竹の、ひとよ二よの仇のふしをば」という古歌の心であった。なにがしの君はいよいよ心あくがれて、だんだん尋ね明かした後に、それがなにがしの少将の妻であるということを確かめたので、君は更に恋文をしたためて、その奥に「あだに見し夢かうつつかなよ竹の、おきふし佗ぶる恋ぞ苦しき」