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こきんしゅうまきのご

古今集巻之五

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《古今集巻之五(こきんしゅうまきのご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 頁

青空文庫

「なんの話かしら」お袖は小光を見た。

「米さんのことよ」と小光が云った、「このまえ話しかけてよしたでしょ、きっとあのときのことよ」

「そんなこと話したかしら」

「とっときのおのろけじゃないの」

「酔ってたのね」お袖は盃を取りあげ、小光が酌をした。お袖はそれを飲んで、うっとりしたような眼つきで窓の外を見た、「――米さん、……なつかしいわね」

「思いいれよろしく、えへん」と小光が云った。

お袖は聞きながして、きまじめに話しだした。主計はまえに途中まで聞き、なにやら身につまされたのを覚えている。お袖は木綿問屋の主人にひかされてから、まもなく、小さいじぶんに知っていた男と出会った。そうだ、相手は幼な馴染だった。いっしょになるために苦労したのではない。二度と逢うまいとして苦しいおもいをしたんだ、と主計は聞きながら思いだしていた。

――死なれたあとで、おれは初めて杉江が恋しくなった、憎い、じつに憎いやつだと思いながら、どうしようもないほどあいつが恋しいと、主計は思った。この気持が、お袖の悲しい話に似ていたんだ。

お袖はほかにも幾つか話をした。木綿問屋と八年、夫婦としてくらしたが、主人が泊りがけで旅に出た留守、若い手代とあやまちをおかした。