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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

横やうしろの壁の白と赤との単純な調和と、装飾の多い内陣の複雑な印象とを、巧みに統一しているのもまたこの柱である。わたくしたちはその間を通って丈六の本尊の前へ出た。修繕材料の異臭が強く鼻をうつ。所々に傷口のできている本尊は蓮台からおろされて、須弥壇の上に敷いた藁のむしろにすわらされている。わたくしはその膝に近づいて、大きく波うっている衣文をなでてみた。S氏が側で、昔の漆の優良であったことなどを話している。あたりには古い乾漆の破片や漆の入れ物などが秩序もなく散らばっていて、その間に薄ぎたなく汚れた仕事着の人がつくばったまま黙々として仕事をしている。古の仏師の心持ちがふとわたくしの想像を刺戟し始める。とにかく彼らは、仏像をつくるということそれ自身に強い幸福を感じていたのではなかろうか。

この盧舎那仏に対しては、実をいうと、わたくしはこれまで感動したことがなかった。いかにも印象の鈍い、平凡な作で、この雄大な殿堂に安置されるにはふさわしくない、と感じていた。しかし今度は、近々と寄って細部に現われた細かいリズムにふれることができたせいか、全体の印象にかなりの快さを感ずるようになった。