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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

西洋の風呂は事務的で、日本の風呂は享楽的だ。西洋風呂はただ体のあかを洗い落とす設備に過ぎないので、言わば便所と同様の意味のものであるが、日本の風呂は湯の肌ざわりや熱さの具合や湯のあとのさわやかな心持ちや、あるいは陶然とした気分などを味わう場所である。だから西洋の風呂場と便所とはいっしょであるが、日本人はそれがどんなに清潔にしてあっても、やはり清潔だけではおさまらない美感の要求から、それを妥当と感じない。この区別が興味をそそって、とりとめもなく文化史的な考察に入り込ませる。

湯を享楽するのは東洋の風だと言われている。東洋でも熱い国では水に浴するがこれは同じ意味のものと認めてさしつかえない。西洋にももちろんこの風がないわけではないが、それはトルコ風呂の類で、東洋の風を輸入したものであろう。温泉なども、西洋のはおもに温泉を呑むのであって、日本のように浴して楽しむのではないらしい。シナの古い文芸では、浴泉の享楽が酒や女の享楽と結びつき、すこぶる感覚的に歌われているが、西洋にこんな文芸はあるかどうか。もっともローマでは入浴が盛んだった。私宅の浴室も公衆の浴場も、純粋に享楽のために造られたもので、特に公衆浴場はぜいたくの限りがつくしてあったらしい。