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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

恐らくそこに熱国の風物の反映があるのであろう。気温が高くて、しかも極度に乾燥した透明な空気、湿いのない鮮明な色、――それがあの色調を造り出したに相違ない。あれは濡れた感じのまるでない色調である。中でも不思議に感じたのは、山の中にキンナラの夫婦がいて雲の中で天人が楽を奏しているという構図の、五六世紀ごろの画であった。人物も植物も非常に濃い色で描かれているにかかわらず、妙に冷たい、沈んだ感じを持っている。たとえば木の葉などは、黒ずむばかりの濃い緑に塗られていながら、どんな深い森の幽暗な樹陰でもこんなではあるまいと思われるほどに、光や空気の感じを欠いている。熱国の強烈な色彩というものを、華やかに輝く光と結びつけて考えている我々には、これらの画の色調はかなり予想外であった。しかし考えてみると、雪山を理想郷とするインド人が冷たい色に対する特殊な好尚を持っているということには、少しも不自然なところはない。インドの土地を知らない者には、あのニュアンスの少ない、空気の感じのまるでない色が、どれほど写実になっているのか判断することはできないが、少なくともあの色調によって、五六世紀ごろのインド人に普通であった情調を推測することはできると思う。