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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

あの入り口正面の陳列壇などには、そのために特に一室を設けてもいいような傑作が、いくつも雑然と列べられている*。そのためにどれほど見物が損をしているかわからない。当事者にわかりいい言葉でいうと、「こういうことは日本の恥である。こういうことがあるから西洋人が日本人を尊敬しないのである。」

国宝という言葉をもっと生かしてもらいたい。日本の古美術に対しては、われわれは日本民族の一員として、当然鑑賞の権利を持つ。この鑑賞のために相当の設備をしないのは、国宝の意義を没すると言っていい。

* これは大正八年ごろのことで、そのころには入り口正面に向かって聖林寺の十一面観音、それと背中合わせに法隆寺の百済観音などが立っていた。聖林寺の観音はその後数年を経て寺へ帰った。桜井から多武の峯への路を十数町行ってちょっと右へはいったところである。百済観音もまた近年は法隆寺へ帰って、宝物殿の王様になっている。

だが、聖林寺の十一面観音は偉大な作だと思う。肩のあたりは少し気になるが、全体の印象を傷つけるほどではない。これを三月堂のような建築のなかに安置して周囲の美しさに釣り合わせたならば、あのいきいきとした豊麗さは一層輝いて見えるであろう。