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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
線上閱讀亀井 勝一郎《大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,647 字 · 215 頁
瞑想をとおり越して、あどけなく眠っているようにみえる。その前に伏して念ずるよりも、平生机の上にでも安置して、時々頬を撫でてあげたい――そう思うほど親しい印象をうけた。そうしているうちに童心を与え給うのが、このみ仏の慈悲なのかもしれない。だが思惟の像としては、あまりに可愛くて、いまにも絶えいるばかりのはかなさを感じさせる。
中宮寺の像は、その大いさにもよるが、うける感じが勁く逞しいのである。つまり思惟は眠れるごとくみえても、直ちにそれを実践に移しうるような頑丈な下肢によって支えられていること、逆にいえば、大地に根をおろして、その上で虚空の果までも漂い行かんとする思惟、この調和が私にはすばらしく思われたのだ。前にも述べた下半身の安定感――これがなかったならば思惟の挙措は決してその深みをあらわすことが出来なかったであろう。広隆寺の同じ形式の像が実に美しいことは私も認めるが、あの思惟にどこか弱さが感ぜられるのは、下半身の安定感に欠くるところがあるからではなかろうか。とくに右足を左の膝の上にのせ、更にそれを抑えるように置かれた左手がぎごちなく思われる。抑える力――静かだが然もきっちりと締める微妙な一点――あの大事な左手を刻みそこなったのである。