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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
線上閱讀亀井 勝一郎《大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,647 字 · 215 頁
法輪寺
荒廃
そして孤独者を微笑せしむるものこそ菩薩と云える。
――昭和二十年秋――
法輪寺
荒廃
中宮寺界隈の小さな村落を過ぎて北へ二丁ほど歩いて行くと、広々とした田野がひらけはじめる。法隆寺の北裏に連なる丘陵を背にして、遥かに三笠山の麓にいたる、古の平城京をもふくめた大和平原の一端が展望される。大和国原という言葉のもつ豊かな感じは、この辺りまで来てはじめて実感されるように思う。往時の状景はうかがうべくもないが、田野に働く農夫の姿は、古の奈良の時代とさして変ってもいないだろう。春は処々に菜の花が咲き乱れて、それが霞んだ三笠連山の麓までつづいているのが望見される。畔道に咲く紫色の菫、淡紅色の蓮華草なども美しい。おそらく飛鳥や天平の人たちも、この道を逍遥したことであろう。陽炎のたち昇る春の日に、雲雀の囀りをききつつ、私のいつも思い出すのは、「春の野に菫摘まむと来し吾ぞ野をなつかしみ一夜宿にける」という万葉の歌である。この歌の気分がここで一番しっくりあうように思う。
しかし大和国原の豊かさを偲ぶという点では秋の方が更にふさわしい。今年はとくに豊作の故でもあったろうが、眼のとどくかぎり一面に実った稲の波である。