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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁
それは、夜の丑の刻、屋根の上の火の見へ上って、待つ人の家の方に向い平縫の帯を投げかけて、自分はその端を持って、振向かずに火の見を下りて来る、その帯が物へひっかからず無事に自分の部屋まで来ることができれば、その待ち人は、きっと来るに違いないということ。
お松は、それをやってみようと心を決めて、そっと帯を出して、この部屋を忍んで、二階から火の見へ出てみました。
空は星が高く、葛野郡へ銀河が流れる。一二軒、長夜の宴を張った揚屋の灯も見えるが、そのほかは静かな朱雀野の夜の色。
火の見に立って、お松はその帯を投げかける何れかを見廻したけれども、七兵衛の宿というのを聞いておかなかったから、やはり出るにも入るにも大門の方。
別れてもまた会うという意味の引帯を、お松は朋輩から聞き覚えたように、大門の方に向って投げかけて、
東路の道の果てなる常陸帯
かごとばかりも会はむとぞ思ふ
この歌を口の中で唱えて、立っていると、サーッと、風の吹きつけたような物の音。中庭の木立が瓦に擦れて鳴るかと思えば、猿のように屋根へ飛び上った人影。
お松はハッと身が竦む。その時、黒い人影は早や自分の前に立って、