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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

復讐跡あり恍として血痕、

仇人、馬に騎り魚貫して過ぐ、

挺刀一呼、渠が魂を奪ふ、

姉夫慷慨にして兼ねて義に従ふ、

脊令原寒うして同じく冤を雪ぐ、

一水西に渡ればこれ原、

当時投宿の館はなほ存す、

吾れ来つて燈を挑げて往昔を思ふ、

想ひ見る淬刃暁暾を候ふ、

嗟哉、士風なほ薄夫をして敦ならしむ、

寛永の俗、いま誰と論ぜん。

詩は吟じ終って暫らくのあいだ静かである。それにしても、もう立退き命令が来そうなものじゃと、隣室の竜之助は心待ちにもなるが、なかなか来ない。

ちょっと、隔ての襖を細目にあけた者があったようだが、あけて直ぐに立て切り、

「まだいるわ、隣りに男が一人いる」

あけた男は、やや小声であったけれど竜之助にはよく聞える。

「まだいるか、女中め、なんとも言わん」

ハタハタと手が鳴る。

「お召しになりましたか」

忙しげにやって来た女。

「これこれ女、ナゼさいぜん申しつけた通り、隣室へ申し入れん」

「はい、どうも相済みませぬ、つい忙しいものでございましたから」

「早速、申し入れろ」

「はい、ただいま……」

女中は、すぐに来るかと思うと、すぐには来ないでいったん下の座敷へ行ってしまったらしい。