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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

「ホーイホイ」

その声は相変らず、遠くもなく近くもなく、纏まって響いて来るのであります。猿どもは米友を睨めると共に、しきりにその声のする方を気にしているようです。

そのうちにどうしたものか、猿どもの陣形が忽ち崩れ出しました。ひとたび陣形が崩れ出すと共に、畜生の浅ましさであろう、今までの擬勢が一時に摧けて、我勝ちに逃げ出しはじめました。その崩れたのと逃げ足との、あまりに慌しいのは、米友をして呆気に取らせるほどでありました。

「ホーイホイ」

その声が敢て近寄ったというわけでもありませんのに。だから米友も少しく拍子抜けの体でいた時分に、やや離れたところへ大きなものが一つ現われました。

「こんちは、ずいぶんいい天気でございますねえ」

その大きなものは、米友とかなり隔たったところにいながら、こう言って米友に挨拶しました。

「いい天気だよ」

米友もまた仏頂面で返事はしましたけれども、その大きな物体を、なんとなく間抜けた男だと思わないわけにはゆきません。なぜならばその大きな男は、牛みたような体格をしている上に、面つきがいかにも暢気らしく、その上に、自分でいい天気だと言いながら、この昼日中のいい天気に、松明の大きなのに火をつけて携えているのですから、かなり間抜け野郎だと米友は見て取ってしまいました。