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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

ムク犬は常に変った様子もなく、米友を塀の潜り戸の方へと導くのであります。

米友が裏の潜り戸をあけて見たけれど、そこには誰も立っていませんでした。

米友は往来を見廻したけれども、雪が降っているばかりで、誰もいないし、通る人もほとんど稀れであります。

こいつは、やっぱり欺がれたかなと思って、首を引込めると、ムクが勢いよく外へ飛び出しました。ムクがこっちから飛び出すと一緒に、向うの木蔭から蛇の目の傘が一つ出て来ました。雪は掃いてあるところもあり、掃いてないところもあるから歩きづらい中を、蛇の目の傘を傾げて、足許危なげにこっちへ歩んで来るのは女でありました。面は見えないけれども、その着物と足許で、まだ若い女の人であるということが米友にもよくわかります。

その人の傍へ飛んで行ったムクは、ちょうどそれを迎えに行ったようなものです。

誰だろうと思って米友は、その傘の中を早く見たいものだと思いました。

「米友さん」

と言って、すぐ眼の前へ来てから、傘を取るのと言葉をかけるのと一緒であった。その人の面を見て、

「やあ、お前はお嬢さんだ」

と米友が言いました。

お嬢さん、と米友が言うのは、それはお松のことでありました。