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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁
「近いうちにお慶たいことがおありなさるんですとさ」
早くも女中たちの口から、こんな噂が立ってしまいました。
その女中たちの中にはお松がいました。お松は今、箪笥から掛物の一幅を取り出して塵を掃っていました。
「お慶たいこととはどなた」
「お松様はまだ御存じないの」
と言って、ほかの女中たちは面を見合せました。
「いいえ、存じません」
「そのお慶たいことで、あんなに御普請が始まったり、こちらではまた御宝物のお風入れがあったりするのではありませんか」
女中たちはお松の迂闊を笑うような言いぶりです。
「それでも、わたくしは存じませんもの」
「それはね」
「はい」
「つい、この近いところよ」
「近いところとは……」
「近いと言ってもこの甲府に近いところ、それはこれから三里ばかり離れた有野村というところの大金持のお家から、近いうちに殿様へお輿入れがあるんですとさ」
「それは結構でございますねえ」
お松は手に持っていた掛物の塵を掃ってその紐を解きました。なにげなくあけて見ると、それは山水でも花鳥でもなく、一枚の絵図面を仕立てた横幅でありました。
神尾主膳の家に慶たいことがあるといっても、それはお松が知ったことではありません。