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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

お絹から呼ばれてお松はその席へ出ますと、

「こっちへお入り」

お松はしとやかに座敷の中に入りました。

そこでお絹はお松を市五郎に引合わせると、市五郎は遽かに膝を揃えて座を下り、

「これはこれは初めまして、わたくしが市五郎めにござりまする、どうぞお見知り置かれて」

と非常に低く頭を下げましたから、お松はそれに準じて丁寧に挨拶をし、

「行届かぬものでござりまする、なにぶんよろしく……」

と両手を揃えて言いました。

近づきが終ってから市五郎は卑下と自慢とをこき交ぜて、自分がこの土地に長くいることだの、折助や人足、それらの間における自分の勢力が大したものであること、御支配をはじめ重役の間にて自分の信用が多大であるということ、そんなことを、それとなく言っているが、お松には聞き苦しいほどであるのに、お絹は上機嫌で、

「お松や、お政治向きのことは別にして、そのほかのことならこの人が何でも心得ているから、お前、何か頼みたいことがあるなら、遠慮なくこの人に片肌脱いでおもらい」

とまで言いました。

お松が自分の部屋へ帰った後も市五郎は、お絹の許を辞して帰る模様がありませんでした。