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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

その研究の間は誰人をもこの室に入れることを避けて、眠ることも、ほとんどこの椅子と卓子とに凭ったのみでありました。疲れた時は夜となく、昼となく、うつらうつらと眠るのでありました。覚めた時は書物と実物とを向うに首っ引きでありました。

今も疲れて能登守は、椅子に深く身体を埋めて眠っていました。その時に扉が静かにあいて、

「殿様」

扉の前に立っているのはお君でありました。

お君は、大名や旗本の家へ仕える女中のように拵えています。お松とは年の頃合いは同じくらいでありましたけれど、お松は肉附のよい、どこかに雄々しいところのある娘でありました。お松に比べると、お君はもういっそう色白で、繊細で、沈んだ美しさを持っていました。

「殿様」

と言って、そっと扉をあけたお君は、椅子に凭ってスヤスヤと眠っている能登守の姿を見て、嫣然として、音を立てないようにその傍へ近づいて行きました。

能登守はよく眠っていて、お君の入って来たのに少しも気がつきません。お君は、能登守の椅子に近いところまで来て、主人の寝顔の前に立っていました。

この数日、主人の髪も乱れているし、それに寝ている面にも窶れが見えていました。