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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

何かにつけてごまかそうとしている時に、またしても、

「鰡八、鰡八」

と破鐘のような大きな声で、続けざまに呼び立てる声がします。

「あれは誰だ」

急病は一時は落着いたけれど、この声で大尽の落着きが乱れて来るようであります。鰡八、鰡八と、事もなげに自分を呼び捨てる怪物が外にあると思えば、よい心持はしないらしくあります。それが怪物であるならば、まだよいけれど、人間であるとしてみれば、打捨ててはおかれないのであります。大尽はその声のする方を睨めていると、

「気狂いでございます」

さきに道庵先生のところへ使者に行って逃げ帰ったのが、恐る恐る大尽に向ってこう言いました。

「隣の屋根の上あたりでする声のようだ、隣はいったい何者が住んでいるのだ」

大尽は耳をすまして、なおその声を聞こうとしながら附添の者にたずねると、

「貧乏医者でございます、貧乏な上に気違い同様な奴でございます」

「怪しからん、ナゼ早く買いつぶして立退かせないのだ」

「それがどうも……」

大尽の御機嫌が斜めになるのを、附添の者はハラハラしていると、

「鰡八、病気はどんな塩梅だ、ちっとは落着いたかい」

屋根の上でこういう大きな声がしました。