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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁

青空文庫

奥庭へ廻って、予てしめし合せた雨戸に触ると、総左衛門は内からそっと開けてくれます。

「御苦労様で御座います」

「シッ――」二人は其の儘廊下の闇に身を潜めました。

一刻ばかりすると、二た間三間距てて娘桜子の部屋で、何やら物の気配がします。

二人の老人は、両方から廻って、廊下の左右から詰め寄せ、娘の部屋の前で顔が合うと、

「それッ」サッと障子を開けました。

中からは大鳥が立つように、藤色の大振袖が飜ります。

「あれーッ」というのは娘の悲鳴。

怪物は主人総左衛門を突き飛ばして、廊下へ真っ直ぐに逃げ出し、勝手口の大納戸へ入ろうとしましたが、此処は早くも戸を締め切ってあります。

後ろからは、

「曲者待てッ」りゅうと追い迫る笹穂の手槍。

退路を絶たれて、元の廊下へ帰った振袖姿は、先刻高蔵人が入り込んだ雨戸が、僅かに閉め残して居るのを見付けて、蹴外すようにパッと外へ飛び出しました。

「己れッ、逃がすものか」年は取っても、武術で鍛錬した高蔵人、続いて手槍を構えたまま庭へ跳びます。

「あれ、父上様」

桜子は部屋から転び出るように、続いて追い迫ろうとする父親の裾を犇と掴んだまま、絶え入るばかり、縁側の月光の中に泣き伏しました。