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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《妖虫(ようちゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 頁
彼が警察の助力によって、事を未然に防ごうという気になれなかったのは、一つは猟奇者として秘密を惜しむ意味もあったけれど、主としてこの非現実的な、夢見心地からであったに違いない。
一ヶ月程にも感じられた闇の中の二十分が、やがて経過した頃、正面の真黒な家屋に、縦に長い糸の様な線が三本、クッキリと現われた。
誰かが屋内に燈火をつけたのだ。それが雨戸の隙間から漏れているのだ。
相川青年は、殆ど這う様にして、まるで一匹の黒犬の恰好で、その光を慕って近づいて行った。そして、注意深く内部の気配を窺った上、一番太い雨戸の隙間に目を当てた。
雨戸の外に障子もない荒屋なので、八畳程の部屋の向うの襖まで見通しであったが、隙間の幅が狭い為に、左右は限られた範囲しか見ることが出来なかった。
先ず目に入ったのは、裸蝋燭らしい赤茶けた光に、チロチロと照らされている正面の襖と、その表面一杯に映っている、巨人の様な人間の、鳥打帽子らしいものを冠って、眼鏡をかけている横顔であった。それが焔のゆれるにつれて、伸びたり縮んだりしながら、異様に大きな唇を動かして、物を云っていた。
「サア、繩を解いてやったんだから、そうビクビクしていないで、もっと真中へ出て来るがいいじゃないか。