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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《妖虫(ようちゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 頁

青空文庫

はもぬけの空であった。老探偵は、敵を油断させて置いて、その虚に乗じて、妖虫事件の探偵に従事しているのに違いなかった。

守青年はガッカリした。三笠探偵の助力もなく、独りぼっちで怪物と戦うのは、何となく不安であった、けれど、今更ら警察の加勢を頼む気にはなれなかった。騒ぎ立ててぶち毀しになることも虞れたし、それに、彼にはこのすばらしい発見を独占したいという素人探偵気質があった。独力で、恨み重なる悪魔の正体をあばいてやり度いという、稚気の様なものがあった。

その夜更け、守青年は真黒な背広に身を包み、父の書斎からソッと持出したピストルをポケットに忍ばせ、桜井家へ出かけて行った。

誰にも知らせず裏庭へ忍び込まねばならない。それには塀を乗り越す外に手段はなかった。彼はまるで泥棒の様に、裏の板塀をよじ登って、庭内の樹立の闇に身を潜めた。

樹立を通して、洋館の二階の品子の寝室が眺められた。問題の窓には今夜は用心深くカーテンが引いてあったが、室内の電燈にそのカーテンが赤黄色く透いて見えた。

召使達ももう就寝したのであろう、邸内は森と静まり返っていた。空には一面の星明り、少しも風のない、異様に物静かな夜であった。