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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
そのいたましい最後の均一!
私たちは、互に、言語もなく、眼と眼とを見合せて、すさまじい荒廃の姿に顫えた。
森谷沢という一筋の小川が、左から流れて、落ちるところあたりから、谷というよりも、沢の方へ近くなり、両側の山の頭が低くなって、天が俄に高くなった。これらの山を踏まえて、農鳥山の支峰、白河内岳が、頭を出す。名にし負う白峰、赤石、両大山脈が、東西に翼をひろげて、長大の壁をたてめぐらし、互に咫尺する間に、溝のように凹まった峡谷は、重々しい鉛色の空であるから、まだ一時半というのに、黄昏のように、うす暗い。前夜の小舎よりは、二里の余も来たろう。
とうとう大雨が降って来た。私たちは、森の下蔭に身を潜めて、小止みを待っている。雨嫌いな私は、鰍沢で、万一の用心にと、買って置いた饅頭笠を冠り、紐の結び方で苦心をしているうちに、意地の悪い雨は、ひとまず切り上げてしまって、下界を覗く空の瞳がいまいましいまでに冷たい。また、二回の徒渉をして、広河内へと達した。
私は、このような狭苦しい谷の中で、このような広濶な地を見られようとは思わなかった。広河内のあるところは、東俣の谷の奥の、殆んど行き止りで、白峰山脈と、赤石山脈の間が、蹙って並行する間の、小い盆地である。