輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

やっとこの山での最高点――と思う、霧で遠くの先は解らない――へ着いた、何だかこう俄に広い街道へでも出たような気がした、霧はフィューと虚空を截って、岩石に突き当って、水沫を烈しく飛ばす、この水球はどこの谷から登って、どこの谷へ落ちるのか解らない、雷鳥だか山鳩だか、赤児のような啼声が、遠くなり、近くなって、偃松の原から起る、冥府の奥の、奥の方から、呼ぶようで、気が遠くなる、未だ後の人たちが来ないので、私は岩角に尻を据えて、黙って霧の中に座っていた、霧は鋭敏なる神経を有する触角のように、尖端を三角形にして、ヒューと襲って来る、霧ではない、もう雨だ、岩も偃松も、寂寞そのものの、しわがれ声を挙げる、私は孤独だ、天もなく、地もなく、ただ幾団が幾団に、絶えず接触して、吹き荒るる風と霧があるのみだ、宇宙におよそ蕭殺の声といったら、高原の秋の風でもなければ、工場の烟突の悲鳴でもない、高山の霧の声である。

その中に倉橋君が来る、晃平を殿として、一行が揃う、こう霧がひどくては、方角も何も解らない、晃平は荷を卸して、路を捜索に出たが、無益に戻って来た、岩の間を点接して、トウヤクリンドウ、ミヤマキンバイ、ミヤマウスユキソウ、チングルマなどがあったが、風と霧と雨の中で、一々眼に止めていられない。