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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

笑っている。

目的は間の岳にある、残んの雪は、足許の岩壁に白い斑を入れている、偃松はその間に寸青を点じている、東天の富士山を始めて分明に見ながら、岩や松を踏み越えて、下りると、誰が寝泊したのか、野営地の跡が、二カ所あった、石を畳み上げて、竈が拵えてあるので、それと知れたのだ、偃松の薪が、半分焦げて、二、三本転がっている。

尾根を伝わって、東に富士山、西に木曾の御嶽を見ながら行くと、また野営地があった、そこはちょっとした草原になっていた、雪解の水で湿っているところへ、信濃金梅の、黄色な花の大輪が、春の野に見る蒲公英のように咲いている、アルプスの高山植物を、代表しているところから、アルプスの旅客が、必ず土産に持ちかえるものにしてあるエーデルワイス(深山薄雪草)は銀白の柔毛を簇がらせて、同族の高根薄雪草や、または赤紫色の濃い芹葉塩釜、四葉塩釜などと交って、乾燥した礫だらけの窪地に美しい色彩を流している。

振り返れば、間の岳(赤石山脈)や、悪沢岳の間から、赤石山が見える、そうして千枚沢の一支脈は、兀々した石の翼をひろげて、自分たちの一行を、遥かに包もうとしている。