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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

私はアブに気がついたほど、まだ余裕があったが、アブの方では、人間などに傍目も触れず、無念無想に花の蜜の甘美に酔っている。だが遂にアブばかりでなかった、石楠花の甘ずっぱい香気は私を包み、アブを包み、森に漂って、樹々の心髄までしみ透るかのように、私までがアブの眷属になったかのように。

この石楠花に対して、武田久吉博士は、シロシャクナゲなる名を用いておられる、博士によれば、シロシャクナゲは、本州中部の高山から、北海道にまで分布し、多数の標本を集めて見ると、葉裏全く無毛のものと、淡褐色の微毛の密生するものとある、無毛のものは、花の色が、白から淡黄に至り、殆ど淡紅暈を帯びることがないが、有毛のものは、紅暈を帯びる、近来無毛のものを、ウスキシャクナゲと称し、有毛の方を、シロシャクナゲと呼んで、これを一変種と認めるが、総称する場合には、ハクサンシャクナゲと呼ぶのが、適当と考えられると(『高山植物写真図聚』解説参照)。

八 室

御中道歩きの特色は、山頂を見あげると共に、山麓を見下すのにある、それが、ブン廻しのように刻々変化してゆくのを、互い違いに併せ視られるところにある。