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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
白剥山の入口などは、解らなくて、森の中を一行が、離れ離れに迷うばかり、滝上りまでもやった、一時は絶望に近かった、しかし山腹に辿りついてからは、去年の路が、微かに見分けが出来た、頂は存外変りがなかった。
そうして一行は東俣谷の、オリットの小舎に着いた、私が恐い、怖ろしい念いをしながらも、もう一遍後髪を引かれて見たいとおもった小舎の前の深潭は、浅瀬に変って、水の色も、いやに白っちゃけてしまった。
ここを出立点として、改めて稿を次ぐ。
川楊(大井川の上流)
前夜は、東俣の谷へ下りて、去年と同じくオリットの小舎に野宿をした。
今朝は、四時半に眼がさめる。禽の、朗かに囀ずる声は、峰から峰へと火がつくようである。寝泊りした小舎の頭の、白花の咲く、ノリウツギの間からも起る。サルオガセの垂れる針葉樹の間からも、同じように起る。この声の行くところ、水と、石と、樹と、調子を合せて、谷間の客を揺り起す。間の岳(赤石山脈)の支峰だと晃平のいう蝙蝠岳は、西の空に聳えて、朝起きの頭へ、ずしりと重石を圧えつける。
小舎の前の渓水に嗽ぐ。水は、南へと流れる。当面の小山を隔てて、向は、西俣の谷になる。