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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

こだま

一

そこまで聞いて、主馬はあっと云った。

「すると……ことによるとあれが」

「そうみても不自然ではないだろう」

「不自然どころですか、そこに気のつかなかった私のほうがよっぽど」主馬は舌打ちをし、自分の頭を指でこづいた、「ええくそ、これほどぼんくらな頭とは知らなかった、これは頭じゃありませんね、こんなのはただ、うう」

「私はすぐでかけるからね」

平四郎は杉戸口へ入りながら云った。

「青山はすぐ江戸へ帰って、私からの知らせを待っていて呉れ」

「貴方が自分で跟けるんですか」

「捜しに捜していた相手だからね」彼は珍しく確信ありげに云った、「それに、こんどの旅では当りをつけたこともあるんだ、きっといい知らせが出せると思うよ」

こだま

一

夜明けまえであった。

高い山ふところの、森に囲まれた、狭いはざまの岩蔭で、半之助がいま炊きあげた飯の鍋をおろし、べつにしかけた味噌汁の鍋を火にかけた。

彼は筒袖の着物に、鹿の皮の袖無しを重ね、そまつな葛布の短袴に、なにかの毛物の皮で作った草履をはいている。かなり肥ったし、日にやけて、すっかり逞しくなったが、月代も髭もきれいに剃っているので、もちまえの人品のよさが、却ってひきたつくらいだった。