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ねんじゅうぎょうじおぼえがき

年中行事覚書

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《年中行事覚書(ねんじゅうぎょうじおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 135,005 字 · 262 頁

青空文庫

いつからこういうふうに、特に十月を以て祭るという信仰が始まったものか。私の想像では、正月二十日の商人恵比須講の方が早く、それを農村の方に移すとすると、やはり十月の二十日が農民の考え方に、よく調和したのではないかと思う。古いことではないらしいが、恵比須さまのように雑然たるいろいろの言い伝えをもった神も少なく、それを綜合して見てもまとまったことは何もわからない。

たとえば恵比須は脚がお悪いから、また聾だから出雲の集会には出られず、それで留守番をなされるなどという。脚の方は神代記の蛭子をこの神としての推測らしいが、その事がすでに根拠はない。つんぼという一説も確かでないことは同じだが、社殿の後にまわって戸を叩いたり、または大きな声を揚げて願を掛けたりするのを見ると、何か今までの神よりももっと積極的に、進んで求めなければならぬ神、というような考えが下にあったのかもしれない。

恵比須を農作の神、ことに田の神と信ずるようになった原因は、この方面から少しずつわかって来る。この信仰はやや飛び飛びながら東西の諸国に行われ、土地によってはそれが大黒ともなり、海と陸との生産擁護をこの二つの神が分担し、または二神揃って農民の家に祭られたまうを見れば、これが中世の福神思想に基づくというまではまず疑いがあるまい。