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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像(あしのうら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 頁

青空文庫

だが、この轢殺鬼の計画は、最後まで、成功しただろうか――。

『あと二分……』

源吉は、懐中時計を覗きながら呟いた。

前方を注視すると、ヘッドライトの光が、夜霧に当って、もやもやとした雲を現わしていた。その白い雲が、動揺につれて、ふらふらと揺れ、頸を傾げると、京子の福よかな、肉体を表わしているのではないか、とも思えた。汽車はぐんぐん前進している。源吉は、鼻唄でも歌いたい気持だった。

軈て、岩ヶ根の出ッ鼻が、行く手を遮って、黒々と、闇に浮出して来た。その蒼黒い巨大な虫を思わせる峰には、最初の日、見たような、くすんだ朱の火星が、チカチカと遽しく、瞬いていた。

カーヴ! 源吉は、窓から乗出して、縞を描いて流れるレールを見詰めた――。

!轢いた!

その瞬間、源吉の乗出していた顔に、べたッとなま暖かいものが飛ついた。血?

源吉は、列車が止まるのも、もどかしそうに、飛下りた。

源吉の躰は、ワナワナと顫えていた。

(京子じゃない、京子じゃないぞ……)

彼は冷汗を拭った。

(た、たしかに男だ。男を轢いたんだ)

それは、轢いた時の、あの感じで、断言出来た。それに死骸である京子から、あんな、暖かい血の飛ぶ筈はない……。