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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像(あしのうら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 頁

青空文庫

孤独

洋次郎は、銀座の裏通りにある“ツリカゴ”という、小さい喫茶店が気に入って、何時からとはなく、そこの常連みたいになっていた。と、いってもわざわざ行く程でもないが出歩くのが好きな洋次郎は、ツイ便利な銀座へ毎日のように行き、行けば必ず“ツリカゴ”に寄るといった風であった。

“ツリカゴ”は小さい家だったけれど、中は皆ボックスばかりで、どのテーブルも真黒などっしりしたものであり、又客の尠い為でもあろうか、幾ら長く居ても、少しも厭な顔を見ないで済むのが、殊更に、気に入ってしまったのだ。

何故ならば洋次郎は、その片隅のボックスでコーヒーを啜りながら、色々と他愛もない幻想に耽けることが、その気分が、たまらなく好ましかったからであった。

そうして何時か黄昏の迫った遽しい街に出ると、周囲のでかでかしいネオンサインの中に“ツリカゴ”と淡く浮くちっぽけなネオンを、いじらしくさえ思うのであった。

そうして今日まで交う中、洋次郎は図らずも今この“ツリカゴ”の中で、一人の見知らぬ男に話しかけられた。その男は洋次郎よりも古くから、店の常連らしく、そういえば彼が始めてここに来た時に、既に何処かのボックスで、一人ぽつねんと何か考え事をしていたこの男の姿が、うっすらと眼の底に浮ぶのであった。