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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像(あしのうら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 頁

青空文庫

月はなかったけれど、星は降るように乱れ、その仄な光りで、崖の上からは、眼の下の海岸を歩く白服が、見えぬ筈はなかった。

恋人同志らしい二人連の姿が、人気のない海岸の草叢の中に消えてしまった、ということに、他人の色々な臆測は、却っておせっかいかも知れない、鷺太郎は一寸、こんな時、誰もが感ずるであろうような、皮肉じみた笑いが片頬に顫えたが――、鷺太郎は、何とはなく、不安に似た苛立たしさを覚えたのだ。それは不吉な予感とでもいうのであろうか。

到頭、たまり兼ねたように、大きく伸びをすると、それでも跫音をしのばせ乍ら、注意深く歩いて行って、さっき二人が下りたらしい崖の小径を捜して見た。

淡い光の中で、やっと捜し当てみると、それは、小さい崖くずれで、自然に草叢が潰されて出来たような、ざらざらとした小径で、その周囲には腰から胸辺りにまで来る、名も知らぬ雑草が生いしげり、黒い潮風に、ざわざわと囁き鳴っていた。

鷺太郎は、その小径のくずれかかった中程で足をとめ、尚一層注意深く、耳を澄まして見たが、あたりはまるでこの世の終りのように、シーンと静もりかえって、葉ずれの音以外、なんの物音も聴えなかった。